①シンセサイザーの印象的なリフで…

シンセサイザーの印象的なリフで始まるこの曲は、1984年にリリースされオリコンチャートで6位を記録。日清カップヌードルのCM曲にも使用された、大沢誉志幸さんの代表曲です。「途方に暮れる」男の彷徨うような感情の波を象徴するインパクトの強いリフは、まさにこの曲の核となる感情と世界観を凝縮した魔法のよう。シンプルなのに一度聴いたら決して忘れられないほど心地良いんです。

 

改めてこの曲を聴くと、まるで色褪せない映画のフィルムのように、当時の情景が鮮やかに蘇ります。青春時代にこの曲を聞いていた人なら、メロディに乗せて忘れかけていた甘酸っぱい記憶がふと蘇ってくるはず。あの頃の夜の匂い、少し切ない恋の記憶…。大沢誉志幸さんのハスキーで憂いを帯びたボーカルが、心の奥底に眠るノスタルジーを呼び覚ましてくれる名曲です。

 

YouTube【大沢 誉志幸  そして、僕は途方に暮れる】

 

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②この楽曲の魅力を語る上で…

この楽曲の魅力を語る上で欠かせないのが、その時代を先取りした洗練されたアレンジです。当時の日本の音楽シーンにおいて、いち早く都会的でスタイリッシュなサウンドを取り入れた大沢誉志幸さんの音楽性は、この「そして僕は途方に暮れる」においても、存分に発揮されています。都会の孤独感を際立たせる、浮遊感のあるシンセサイザーの音色。何度も繰り返されるリフは、まるで主人公が過去の記憶と現実の狭間を彷徨っているかのようでもあり、感情の麻痺状態を表現しているようにも聞こえます。

 

曲の冒頭とラストで繰り返される「見慣れない服を着た 君が今出て行った」というフレーズにも、深く引き込まれます。この部分だけが、男にとっての今。現実。それ以外の歌詞は、過ぎ去ってしまった日々への追憶や、男の心情を描いているんだと思う。君が出て行った後で、愛しいあの日々を思い出して、改めて君がいないという現実に打ちのめされ、そして途方に暮れる。泣けてきますね…いや、もう涙すら出ないほどの喪失感に近いのかな。

 

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③銀色夏生さんの書いた詞は素晴らしく…

銀色 夏生(ぎんいろ なつを)さんの書いた詞は素晴らしく、まるで短編小説を読んでいるかのごとく聴いていると情景が目に浮かんでくる。こんなにスムーズに自分が歌の登場人物になったように錯覚できる曲もそうそうないですよ。福山雅治さんをはじめ、多くのアーティストがこの曲をカバーしていることからも、その魅力と影響力の大きさが窺えます。中でも特におすすめしたいのは、小林建樹(こばやし たてき)さんのカバーバージョンです。

どのアーティストも、カバーではこの曲の最大の魅力であるリフを完全に取っ払っていて、小林建樹さんもそうなんですが、小林建樹さんのバージョンはこの曲を知らない人が聞いたら、彼のオリジナル曲だと感じるほど見事に自分のものにしています。原曲への深い愛情があるからこその完成度なんでしょうね。原曲は都会の夜景、小林建樹さんのアレンジは夏の終わりの海岸、個人的なイメージで言うとそんな感じです。

YouTube【そして僕は途方に暮れる 小林建樹】

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ユニバーサル ミュージック

 

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④人生で初めて付き合った彼女との…

人生で初めて付き合った彼女との別れ際、携帯電話の着信音が偶然この曲。

まだ3和音、4和音が主流だった頃、携帯電話からピコピコと鳴り響いた着信音。それが別れを告げるメールの合図かもしれないと、胸が締め付けられるようなドキドキを感じたあの日。今もほろ苦く、大切な思い出として心に刻まれています…。

音楽の力って、本当に不思議ですよね。Mr.Childrenの桜井さんが秦基博さんの歌声を「ズルい声」と表現していたけれど、大沢誉志幸さんも相当にズルい声だと思うんですよね。かすれていながらも艶っぽいハスキーボイス。こんな声に生まれたかった…。

 

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