【目次】
①夏になると聴きたくなる…
夏になると聴きたくなる曲は色々あるけれど、GLAYの「とまどい」と「SPECIAL THANKS」、この2曲が収録されたシングルも、毎年必ず手が伸びる1枚です。
この2曲を聴くと、一瞬で大学生だった頃の自分に戻れるんですよね。あの、暑い陽ざしの中で友達と笑い合ったり、語り合ったり、何気ないことで大騒ぎしたり――そんな毎日が、ふっと鮮明によみがえってくる。
あの頃は、とにかく楽しかった。何も特別なことがあったわけじゃないけど、毎日がキラキラしてた。好きな音楽を聴いて、友達としゃべって、ただそれだけで幸せだったのかもなぁ…なんて思ったり。
このシングルが出たのは2000年。当時のGLAYはほんとすごくて、どの曲も名曲ぞろいでめちゃくちゃ売れてたし、カラオケ行けば絶対誰かが歌ってる、そんなバンドだったんですよね。
アップテンポとバラードといった感じの対照的な2曲なのに、それぞれが本当に完成度の高い名曲で、どちらか1曲だけでもシングルが成立するレベル。それをあえて同じCDに収めたというところにも、作品としてのこだわりや想いを強く感じます。
「とまどい」で夏のまぶしさを全身で感じて、「SPECIAL THANKS」でその余韻にひたる。まるでひと夏の物語をぎゅっと詰め込んだような一枚です。
ちなみに、このCDは日本で“バンド”が出した作品としては、史上最後のミリオンヒットなんです。ソロアーティストだと、たぶん2006年の秋川雅史さんの「千の風になって」が最後のミリオンじゃなかったかな? 間違ってたらごめんなさい…。
実はこのCD、「SPECIAL THANKS」が先で「とまどい」が後ろになっている曲順違いのバージョンがあるんです。たしかファンクラブ向けに配られたものだったと思います。
②「とまどい」はとにかく夏感が…
Youtube【GLAY / とまどい】
「とまどい」はとにかく夏感が満載。イントロのギターが鳴った瞬間から、一気に夏の風景が広がるような、爽やかな熱を感じさせる曲です。歌詞がなくても、「これは夏の曲だな」ってわかるくらい――空気の匂いや陽ざしのまぶしさまで思い出せるようなメロディなんです。
あの疾走感、あの透明感、そしてTERUのボーカルが吹き抜けるようなあの感じ。聴いているだけで、夏の風を全身で浴びているような気持ちになります。
そしてこの曲、構成がちょっと変わってるんですよね。
一般的なAメロ→Bメロ→サビ…という定型をなぞるんじゃなくて、すべてのパートにフックがある。AメロもBメロも、どれもが主役級。色んな曲調をうまく組み合わせながら、ちゃんとひとつの世界観として成立してる。
まるで一曲の中でひとつの夏が移ろっていくような感覚すらあるんですよね。一発で気分がアガるのに、どこか胸がキュッとする…そんな絶妙なバランスがたまりません。
③一方の「SPECIAL THANKS」は…
Youtube【GLAY / SPECIAL THANKS】
一方の「SPECIAL THANKS」は、「とまどい」とは打って変わって、夏の終わりのやさしい風のような一曲。
GLAYのバラードといえば、「HOWEVER」や「Winter, again」といった名曲がすぐに思い浮かぶ人が多いかと思いますが、「SPECIAL THANKS」はそれとはまた違った魅力があります。
もっと静かで、もっと私的で、まるでノスタルジックな短編小説にメロディを乗せたような繊細さ。
情景や感情がやさしく浮かび上がってくるような言葉選びで、“あの頃”をふっと思い出させてくれるような不思議な力があります。
特に胸に刺さるのが、この歌詞:
いつかは…一人でもう一度ここに戻るようなそんな気がしてた be back in your eyesまるでその場所に想い出の跡に忘れ物がまだあるようで
このパートは演奏が抑えめになるところに重なっていて、ふっと息をのむような静けさとともに心に響いてきます。
“be back in your eyes”というフレーズも、英語の歌詞で突然歌われるからこそ余韻が強くて、「もう一度、あの日見たまなざしの中に帰りたい」――そんな気持ちをやさしく表現していて本当に美しい。
「とまどい」がその瞬間のまぶしさや勢いを描いているなら、「SPECIAL THANKS」は“過去形”のやさしさと余韻を抱きしめるような曲。
「とまどい」と「SPECIAL THANKS」、この2曲が揃っているからこそ、まるで一枚のCDにひとつの夏が閉じ込められているような気がするんですよね…。